記憶

「私たちが生きている限り、私たちの記憶はいつまでも驚く程変わりやすい。

その移り気な鏡の中に、私たちは自分自身を見ているのだ。」

 

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私ってば本当に大切なことを沢山大学で学んでいたんだなと感心するのだけど

これは大学3年の時に作ったレジュメからの引用です。

痺れる言葉だわ。

 

 

教材は「プルーストの記憶、セザンヌの眼」

 

詳しい内容は忘れちゃったけど…

これまた痺れた話をひとつ。

 

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2000年にニューヨーク大学で“思い出し”に関する実験をしたんですって。

 

ラットに大きい音を聞かせてから電気ショックを流して

音を聞くとショックを思い出すように条件付けをしましたと。

 

記憶を生成するにはタンパク質が必要だってことがわかっていたから

ふたつのパターンでタンパク質生成を阻害する化学物質を注射した。

 

1、記憶の阻害

条件付けの前に化学物質を注入する。

結果、当たり前だけど、記憶をすることができないから、そもそも音と電気ショックの関係を覚えられない。

 

2、思い出しの阻害

条件付けをした後、大きい音を聞かせ、その意味を思い出そうとする瞬間に化学物質を注入する。

結果はどうでしょう?

条件付け(記憶)をしていたはずなのに、その痕跡まで、跡形もなく消えてしまった。

 

 

これが何を意味するか?

 

思い出す思い出さないに関わらず長期的に存在していると思われていた“記憶”が否定される。

 

つまり“記憶”は思い出す度に“再固定”されているだけであって

常に“固定”された真実の記憶など、存在しないということ。

 

思い出せば思い出すほど

その記憶は正確性を欠いて上書きされていくのですって。

 

 

 

 

あの時の香りを思い出す瞬間は

本当の香りを忘れる瞬間である、と。

 

 

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記憶とはなんぞや。

リアルとはなんぞや。

思い出とは…。

 

 

 

自分の中にぎっしり詰まったこの“記憶”は

私を支え、抱いて、足を絡め取る、この記憶たちは

 

 

 

 

…移り気な鏡。

 

 

 

うむ、痺れる。笑